FWA

5G fixed wireless gains traction in U.K. with Samsung, Arqiva trial

Samsung の製品を使ってイギリスの通信事業者が FWA トライアルをやるとの事。Verizon Spec がベースになっているのだろう。

Verizon Spec は、5G と銘打っているが FWA のために 3GPP よりも先行して仕様策定した技術になる。基本的にこれらの仕様がそのまま 3GPP に反映されるという事はなく、参加したベンダは資産流用が難しいかなと思っていたが、FWA というニーズのある国には(周波数帯を合わせるという作業はあるだろうが)そのまま売れるようだ。

イギリスなんかは(行った事ないけど)建物の築年数が長いといった背景も伴い、まだまだ ADSL が現役という事でブロードバンド化が進んでおらず、政府もそれを問題視しているようである。こういった国にとっては工事を最小限に抑えられる FWA は有効なのかもしれない。また、記事にある 28GHz 帯のような mmWave は占有帯域幅を十分に確保する事ができるため、高速大容量な通信を提供できるというのもメリットとなる。

一方で、直進性が強いため、従来のセルラーネットワークのようなエリアカバレッジを確保しづらい。カバレッジという意味で言えば、FWA 用途であれば端末は移動しないため、そういった課題もある程度割り切る事ができる。しかしながら、屋内浸透が望めないという部分は非常にネックになる。というのも、家の壁までは電波が届くものの、屋内に引き込むためには工事が必要になるからだ。この場合、「古い建物をブロードバンド化させたい」というニーズには少々ハマりづらい。

まとめると、

  • 低い周波数帯を使う場合
    • 占有帯域幅を確保しづらいため、ピークスループットは出しずらい
    • 屋内浸透が見込めるため、工事は比較的容易
  • 高い周波数帯を使う場合
    • 占有帯域幅を確保しやすいため、ピークスループットが見込める
    • 屋内浸透が見込めないため、宅内への引き込み工事が生じる

といった感じになる。過去の雰囲気からすると、前者の場合は、中途半端な速度しか出ないようなサービスとなり淘汰される可能性があるかなという印象。後者の場合、(アメリカのように)国土が広くファイバをいちいち家まで引き込んでいるとコストがかかるというケースにはよいのかもしれない。

ところで、FWA で真っ先に思い浮かぶのは WiMAX だ。IEEE802.16 系は、最初は盛り上がりを見せたものの、チップを提供する Intel が手を引き、結局は次の規格が出ず、中身は TD-LTE という WiMAX2+ が出て終わりとなってしまった。こちらは Mobile WiMAX の話で、FWA での WiMAX を提供していた地域 WiMAX なんかは本当に話を聞かなくなった。そもそも、日本の場合は NTT 東西をはじめとした FTTH サービスがアホみたいに普及しているので、高速というイメージで WiMAX は勝てなかったのだろう。

思うところとしては、FWA に対するモチベーションがアメリカとイギリスで違うのかなと。前者は国土の広さから生じる「光ファイバを建物まで敷設するまでのコスト」であり、後者は「光ファイバを建物内に引きこむための工事コスト」なのではないか。

イギリスのようなモチベーションで FWA を導入する場合は、低い周波数帯を使う方が理にかなっているように感じるが、その場合はピークレートの問題が出て、結局中途半端な印象を持たれて普及しないというリスクがある。