5G のキラーアプリ

5G broadband services to be challenged by mm wave spectrum limitations

28GHz 帯を使うというのは、まとまった帯域幅を確保する(すなわち高速化させる)という点では有利に働くが、伝搬損失の観点(特に屋内浸透が見込めない)ではデメリットとなる。

今までのセルラのエリア構築では、家の中というのは基本的には屋外のマクロ基地局から吹き込むという事をやっている。そうなってくると伝統的なエリア構築のやり方を踏襲すると、コストがとんでもないことになる。そもそも、ハンドオフできるようなカバレッジすら確保できない可能性がある。モビリティもくそもない。

そういった中で一つのユースケースとして出てくるのは FWA, すなわち FTTHADSL の代替。実際に、Verizon はこれをモチベーションとして 5G の早期導入を目指しているようだ。ただ、記事にあるように FWA 自体は 5G のキラーアプリになるかと言われるとかなり懐疑的だ。そもそも FWA に使える技術としては WiMAX (IEEE802.16) があったが、結局、流行しなかった。日本では IEEE802.16e (Mobile WiMAX) が採用されたし、最終的には WiMAX2 と呼ばれるものは実質 TD-LTE であった。残念。

「5G でも十分なカバレッジが作れる」と豪語しているオペレータもいるが、実際のところはどうなるかはわからない。たしかに、十分なカバレッジが作れれば、そこに乗ってくるアプリも 4G の延長を想定したものとなるだろう。しかし、商用環境で 5G がカバレッジ観点でどのようなパフォーマンスを出せるかは未知数であるので、アプリもどのようなアプリが向いているか分からない。アプリが想定できないとネットワークが作れないというのもあるので、卵が先か鶏が先かという問題を抱えながら、5G はなかなか標準が決まらず、焦っているのは先行導入を目指すベンダとオペレータという展開だ。

5G may use 28GHz spectrum band for one of commercial service. The advantage of 28GHz is that we can get a very wide spectrum band to achieve the very high speed peak rate. But, one of the disadvantages is that we can not expect for the propagation, especially indoor penetration.

How to keep the wireless coverage in the traditional cellular network? Mobile network operators deploy macro/small base station and such a base stations provide indoor coverage by the penetration. In case it can not, mobile network operators build indoor-cells.

In 5G era, we can not do such a construction because the cont will be very high. So we need to think alternative plan how to provide 5G coverage.

One of the answers is FWA. FWA needs not to guarantee the widely coverage, because houses never move. Verizon, which is a mobile operator in North America, will hurry up to provide FWA service via 5G. But, as this article says, it will not be the motivation to roll out the 5G commercial service.

FWA is not popular solution. For example, WiMAX (IEEE802.16) did not become a popular, and Mobile WiMAX also disappeared (Mobile WiMAX2 became TD-LTE).

Some mobile operator say, "5G can create widely coverage area." Is it really? If we can, We will be able to provide 4"G like service." But if we can not, the application need to be drastically changed. We do not know what application which we provide because the network feature is unknown. And We do not not know how to construct the 5G network because how feature will the future application have. It is Chicken-Egg problem.

Huawei's infrastructure strategy is "OPEN."

Huawei Powers NFV Commercial Deployment into the Fast Lane - Huawei at MWC2016

世界的に見ても大きなベンダであるモバイルネットワークベンダ である Huawei. NFV についても、積極的にオープンを志向しつつ、telco grade の品質を提供しようとしている。

オープンとなると、ベンダの視点からすると垂直統合でサービスを提供できなくなるので (i) パフォーマンスを最大限出すようなチューニングが難しい、(ii) 他ベンダの製品が採用される可能性がある、といった問題が生じる。(i) については OPNFV のようなデファクトスタンダードをつくる団体で主導権を握っていけばある程度は解決する部分もあるが、やはり技術的には制約が出るという意味でチャレンジングだ。(ii) については、後発ベンダであれば逆に自社の製品を売り込むきっかけになるので、Huawei のような会社であれば優位に事が運ぶケースもあるだろう。

加えて、Huawei はネットワークの機能すらもオープン化させようとしている。チャイナモバイルですでに導入済みという事だが、課金、QoS 位置情報といったネットワークに備わっている機能や持っている情報を API としてサードパーティが使えるようにしている。サードパーティAPI を叩くことで「つながるだけではない」形でネットワークを使うことができる。そして、通信事業者はそういった API を使って利益を上げることができる。長年言っていたダムパイプを回避できるかもしれない、という事だ。

ただ、アプリケーションにおいてもグローバル化が進んでいる中で、一国だけがこういったネットワークの API をサポートしていてもあまり意味がない。こういった機能が普及するためには、世界中のオペレータ同士が足並みを揃えていく必要がある。実際にはオペレータ主導でこういった取り組みを行うのは難しいだろうから、googleApple といったパワーのある企業が主導していく事になるだろう。

5G のキーポイント

5G時代のコアネットワークは「機能分離で柔らかい」 | ビジネスネットワーク.jp

5G 時代のコアネットワークの形についての記事。MEC, 仮想化、Network slicing, Centralized RAN など、システムアーキテクチャに関する新技術の導入が目立つ。これは、記事がコアネットワークに関するものだからというより、5G における関心事が無線アクセス技術 (RAT) よりもアーキテクチャに寄っているからといった方が良いだろう。まだ RAT の標準が固まっていないからという理由はあるかもしれないけれど。

5G の RAT については、4G と同様、OFDM を基本とする方向になっている。高速化は使用する帯域幅を広げるという方向に、低遅延は 1 フレームあたりの長さを短くする(実際には可変にする)という方向になる。そういった意味では、あまり目新しさはないというのが正直なところだ。

ということで、RAT 自体がオペレータに与える要素は少ないのではないかと思う。しかし、エリア設計の観点でドラスティックに変わる要素として、高い周波数帯を使うようになるというところは大きい。加えて、Massive MIMO といったテクノロジーを併用した際、電波がどのように飛ぶ(とエンジニアが認識できる)かは今のところ未知数だ。ソフトバンクはそういった手ごたえを持つために先行して Massive MIMO を導入しているのかもしれないが、既存周波数帯で議論しても特徴をとらえるのは難しいだろう。

という事で、今のところ注目するポイントとしては、

  • 使う周波数帯:どういったエリアを作るか
  • Centralized RAN:どういったエリアを作るか
  • Network Slicing:何のためにやるか
  • 仮想化:何のためにやるか

といったところ。突き詰めると、「想定されるユースケースは何か」という話になるけれど、それを哲学として持っている人は、この世の中にどれだけいるのだろうか。LTE 自体は、なんとなく導入されて、結果として iPhoneAndroid が目的となったように思うが、5G 時代に iPhone がキラーとなるユースケースとなるとは思えない。

Huawei

ここ最近の Huawei.

Optus and Huawei clock 35Gbps speeds in 5G trial | ZDNet

Huawei and NTT DoCoMo reach 11Gbps speeds in 5G Japanese field trial | ZDNet

オーストラリアの通信事業者や日本のドコモとトライアルをやっている。Huawei としては、さまざまな通信事業者とトライアルをやる事で対外的なアピールになる事と、国それぞれで異なる周波数帯のフィールドテストができるというところがメリット。

M-CORD

CORD releases open sourced VEPC in support of 5G deployment plans

CORD というのは、Central Office Re-architected as a Datacenter の略。通信事業者などが持っている中規模の交換センター (Central Office) を、来るべき将来に備えて有効活用しようというものである。具体的には、Central Office に設置されている装置を仮想化していき、集約効率を高めたり、さまざまなファンクションを柔軟に構築できるようにする。または、Central Office ごとに少しずつリソースを取得し、それらを統合させて一つのある程度の規模のデータセンタに見立てるといったこともできるだろう。

CORD のモチベーションとして、ロケーションの有効活用というのがある。用地確保やそこに建物を立てるのは大変だ。建物を建てるのにもまとまったお金が必要だし、用地という点ではそもそも場所を見つけるのに苦労する。データセンタだと、田舎のところに建てるというところになるが、やはり運用にはいくらかの人が必要なので利便性はある程度確保したかったり、電源経路を冗長にとるという観点でいけば、電力事業者にお願いして複数のソースから電力を引き込まないといけないなど制約が多い。

仮想化では異なるサイトに設置されている少数のリソースを組み合わせて一つのプールを形成することもできる。パフォーマンスは落ちやすいだろうが、サイト冗長という観点では有益だろう。既存のリソースを有効活用できるならば、なおよしだ。

CORD をモバイル分野にも導入しようというのが M-CORD であり、5G でもAT&T などが導入を目指しているようだ。具体的な使い方がどうなるか、という話になってくるが、EPC や RAN の仮想化が進んでいく中で、各サイトも仮想化基盤に置き換えていくという選択は、柔軟なネットワーク形成という観点で潰しが効きそうだ。

もちろん、潰しが効くかどうかで投資というのは行われないけれど。

5G のユースケース

Fiber-to-the-home is expensive; could fixed 5G bridge the last mile?

この記事では、5G を Fixed Wireless Access を一つのユースケースとしている。

ブラジルの事例 でもあるように、5G を Fixed Wireless Access として使う事を考えている事業者やベンダーは少なからずいる。一つは、利用する周波数帯が高いため、エリアのカバレッジやモビリティを確保しづらいという背景があるのではないかと思う(FWA であれば、少なくともそういった部分はネガティヴ要素にならないからだ)。

しかしながら、日本を見てみると、既に NTT によって FTTH が張り巡らされている中、そういったニーズは少ない。たしかに、UQ の Mobile WiMAX は一人暮らしの層に対して固定アクセスの代替としての訴求はしているが、全体のシェアとしては限定的であろう。

日本に限らず、特に先進国では周波数というのは貴重な財産になっている。不用意な使用は避けたいというのが本音だろう。せっかくのまとまった周波数帯を使えるのだから、5G が人々にとって素晴らしい未来を提供できる事を祈る。

標準化を巡る戦い

AT&T's Bid For Early 5G Standard Denied By Verizon | Androidheadlines.com

5G についても標準化のために通信事業者や(無線機やコア設備を提供する)ベンダが議論を交わしている。

標準化を行うメリットやデメリットとしては、次のようなところがある。

  • 通信事業者
    • 標準化させる事で仕様が最低限定まるため、複数の無線機ベンダを交えたネットワークを作る事ができる
    • 各通信事業者とも根幹となる技術に差異が出づらくなるため、差別化要素が出しづらい
  • ベンダ
    • 標準化させる事で仕様が最低限定まるため、自社製品を大きな変更なしに複数の通信事業者に売りやすくなる
    • 各ベンダとも根幹となる技術に差異が出づらくなるため、価格競争に繋がる恐れや、他社への取り替えなどが起こりやすくなる

AT&T については、標準が固まったものから構築を開始していくスタンスという事で、Verizon のような競合他社に足を引っ張られるとそれだけ 5G の展開時期が遅れるというリスクが生じる。ただし、Verizon としても標準化が遅れれば同じようなリスクを追う事になるし、標準化スケジュールをある程度無視して開発を進めるとなると、ガラパゴス化を招くという恐れもある。

もしかしたらガラパゴス化した場合のリカバリプランあっての戦略なのかもしれないけれど。