Huawei's infrastructure strategy is "OPEN."
Huawei Powers NFV Commercial Deployment into the Fast Lane - Huawei at MWC2016
世界的に見ても大きなベンダであるモバイルネットワークベンダ である Huawei. NFV についても、積極的にオープンを志向しつつ、telco grade の品質を提供しようとしている。
オープンとなると、ベンダの視点からすると垂直統合でサービスを提供できなくなるので (i) パフォーマンスを最大限出すようなチューニングが難しい、(ii) 他ベンダの製品が採用される可能性がある、といった問題が生じる。(i) については OPNFV のようなデファクトスタンダードをつくる団体で主導権を握っていけばある程度は解決する部分もあるが、やはり技術的には制約が出るという意味でチャレンジングだ。(ii) については、後発ベンダであれば逆に自社の製品を売り込むきっかけになるので、Huawei のような会社であれば優位に事が運ぶケースもあるだろう。
加えて、Huawei はネットワークの機能すらもオープン化させようとしている。チャイナモバイルですでに導入済みという事だが、課金、QoS 位置情報といったネットワークに備わっている機能や持っている情報を API としてサードパーティが使えるようにしている。サードパーティは API を叩くことで「つながるだけではない」形でネットワークを使うことができる。そして、通信事業者はそういった API を使って利益を上げることができる。長年言っていたダムパイプを回避できるかもしれない、という事だ。
ただ、アプリケーションにおいてもグローバル化が進んでいる中で、一国だけがこういったネットワークの API をサポートしていてもあまり意味がない。こういった機能が普及するためには、世界中のオペレータ同士が足並みを揃えていく必要がある。実際にはオペレータ主導でこういった取り組みを行うのは難しいだろうから、google や Apple といったパワーのある企業が主導していく事になるだろう。
5G のキーポイント
5G時代のコアネットワークは「機能分離で柔らかい」 | ビジネスネットワーク.jp
5G 時代のコアネットワークの形についての記事。MEC, 仮想化、Network slicing, Centralized RAN など、システムアーキテクチャに関する新技術の導入が目立つ。これは、記事がコアネットワークに関するものだからというより、5G における関心事が無線アクセス技術 (RAT) よりもアーキテクチャに寄っているからといった方が良いだろう。まだ RAT の標準が固まっていないからという理由はあるかもしれないけれど。
5G の RAT については、4G と同様、OFDM を基本とする方向になっている。高速化は使用する帯域幅を広げるという方向に、低遅延は 1 フレームあたりの長さを短くする(実際には可変にする)という方向になる。そういった意味では、あまり目新しさはないというのが正直なところだ。
ということで、RAT 自体がオペレータに与える要素は少ないのではないかと思う。しかし、エリア設計の観点でドラスティックに変わる要素として、高い周波数帯を使うようになるというところは大きい。加えて、Massive MIMO といったテクノロジーを併用した際、電波がどのように飛ぶ(とエンジニアが認識できる)かは今のところ未知数だ。ソフトバンクはそういった手ごたえを持つために先行して Massive MIMO を導入しているのかもしれないが、既存周波数帯で議論しても特徴をとらえるのは難しいだろう。
という事で、今のところ注目するポイントとしては、
- 使う周波数帯:どういったエリアを作るか
- Centralized RAN:どういったエリアを作るか
- Network Slicing:何のためにやるか
- 仮想化:何のためにやるか
といったところ。突き詰めると、「想定されるユースケースは何か」という話になるけれど、それを哲学として持っている人は、この世の中にどれだけいるのだろうか。LTE 自体は、なんとなく導入されて、結果として iPhone や Android が目的となったように思うが、5G 時代に iPhone がキラーとなるユースケースとなるとは思えない。
Huawei
ここ最近の Huawei.
Optus and Huawei clock 35Gbps speeds in 5G trial | ZDNet
Huawei and NTT DoCoMo reach 11Gbps speeds in 5G Japanese field trial | ZDNet
オーストラリアの通信事業者や日本のドコモとトライアルをやっている。Huawei としては、さまざまな通信事業者とトライアルをやる事で対外的なアピールになる事と、国それぞれで異なる周波数帯のフィールドテストができるというところがメリット。
M-CORD
CORD releases open sourced VEPC in support of 5G deployment plans
CORD というのは、Central Office Re-architected as a Datacenter の略。通信事業者などが持っている中規模の交換センター (Central Office) を、来るべき将来に備えて有効活用しようというものである。具体的には、Central Office に設置されている装置を仮想化していき、集約効率を高めたり、さまざまなファンクションを柔軟に構築できるようにする。または、Central Office ごとに少しずつリソースを取得し、それらを統合させて一つのある程度の規模のデータセンタに見立てるといったこともできるだろう。
CORD のモチベーションとして、ロケーションの有効活用というのがある。用地確保やそこに建物を立てるのは大変だ。建物を建てるのにもまとまったお金が必要だし、用地という点ではそもそも場所を見つけるのに苦労する。データセンタだと、田舎のところに建てるというところになるが、やはり運用にはいくらかの人が必要なので利便性はある程度確保したかったり、電源経路を冗長にとるという観点でいけば、電力事業者にお願いして複数のソースから電力を引き込まないといけないなど制約が多い。
仮想化では異なるサイトに設置されている少数のリソースを組み合わせて一つのプールを形成することもできる。パフォーマンスは落ちやすいだろうが、サイト冗長という観点では有益だろう。既存のリソースを有効活用できるならば、なおよしだ。
CORD をモバイル分野にも導入しようというのが M-CORD であり、5G でもAT&T などが導入を目指しているようだ。具体的な使い方がどうなるか、という話になってくるが、EPC や RAN の仮想化が進んでいく中で、各サイトも仮想化基盤に置き換えていくという選択は、柔軟なネットワーク形成という観点で潰しが効きそうだ。
もちろん、潰しが効くかどうかで投資というのは行われないけれど。
5G のユースケース
Fiber-to-the-home is expensive; could fixed 5G bridge the last mile?
この記事では、5G を Fixed Wireless Access を一つのユースケースとしている。
ブラジルの事例 でもあるように、5G を Fixed Wireless Access として使う事を考えている事業者やベンダーは少なからずいる。一つは、利用する周波数帯が高いため、エリアのカバレッジやモビリティを確保しづらいという背景があるのではないかと思う(FWA であれば、少なくともそういった部分はネガティヴ要素にならないからだ)。
しかしながら、日本を見てみると、既に NTT によって FTTH が張り巡らされている中、そういったニーズは少ない。たしかに、UQ の Mobile WiMAX は一人暮らしの層に対して固定アクセスの代替としての訴求はしているが、全体のシェアとしては限定的であろう。
日本に限らず、特に先進国では周波数というのは貴重な財産になっている。不用意な使用は避けたいというのが本音だろう。せっかくのまとまった周波数帯を使えるのだから、5G が人々にとって素晴らしい未来を提供できる事を祈る。
標準化を巡る戦い
AT&T's Bid For Early 5G Standard Denied By Verizon | Androidheadlines.com
5G についても標準化のために通信事業者や(無線機やコア設備を提供する)ベンダが議論を交わしている。
標準化を行うメリットやデメリットとしては、次のようなところがある。
- 通信事業者
- 標準化させる事で仕様が最低限定まるため、複数の無線機ベンダを交えたネットワークを作る事ができる
- 各通信事業者とも根幹となる技術に差異が出づらくなるため、差別化要素が出しづらい
- ベンダ
- 標準化させる事で仕様が最低限定まるため、自社製品を大きな変更なしに複数の通信事業者に売りやすくなる
- 各ベンダとも根幹となる技術に差異が出づらくなるため、価格競争に繋がる恐れや、他社への取り替えなどが起こりやすくなる
AT&T については、標準が固まったものから構築を開始していくスタンスという事で、Verizon のような競合他社に足を引っ張られるとそれだけ 5G の展開時期が遅れるというリスクが生じる。ただし、Verizon としても標準化が遅れれば同じようなリスクを追う事になるし、標準化スケジュールをある程度無視して開発を進めるとなると、ガラパゴス化を招くという恐れもある。
もしかしたらガラパゴス化した場合のリカバリプランあっての戦略なのかもしれないけれど。
SON
Analyst Angle: Is SON the future of cellular networks?
SON は Self Organizing Network の略。
従来のエリア構築にあたっては、基地局の初期設定やエリアに関するパラメータといった情報は人が設計した上で投入してきた。当然、オペレーションについても人が行う。
セルラネットワークへの品質ニーズ(速度、カバレッジ、サービス継続性)が高まってくると、自然と基地局も密になってくる。そのような環境の変化に対して、人が設計をしていくというやり方ではいつか破綻が生じる。具体的には、基地局が増えれば増えるほど、工数がかかるし、エリアパラメータが収束しない、収束したとしてもそれが本当にベストなエリアかどうかは分からない。
それを解決するためのアプローチが、SON となる。
自己組織化については化学といった分野で古くから研究されている。分子一つ一つが隣接した分子と情報の交換を行い、変化を起こしていく事で、ある一つの分子構造に収束する、といった感じのものだ。SON では基地局一つ一つを要素として、それぞれがパラメータを与えられなくとも隣接した基地局の情報を元に、一つのパターンに収束するという事になる。
SON の主要機能(収束させるべき目標)は主に 3 つに分類できる。
- Self-configuration
- Self-optimization
- Self-healing
ただし、Self-healing については、他の二つと比較すると毛色が異なる。というのも、前者 2 つは、基本的には、周辺含めた基地局の設定を収束させる事を目的としているが、Self-healing については、自動修復、すなわち、ある基地局に問題が起きた時に自動リセットがかかるとか、システムの運用自動化の側面が強いからだ。もっと言えば、configuration/optimization については「どういったものを最適とするか」という観点が重要になる(例えばエリアのカバレッジとトータルスループットは共存できないかもしれない)が、自動修復については「健全な状態に戻す」という意味ではベクトルを揃えやすい。
という事で、SON の難しいところは、互いに毛色の違う 3 つの機能を SON として一まとめに考えてしまうところかもしれない。