光ファイバの伝送効率

世界最高周波数利用効率を達成した光ファイバーの伝送容量拡大技術の実証に成功 | 株式会社KDDI総合研究所
KDDI 総合研究所(旧 KDDI 研究所)にて、光ファイバの伝送効率を上げたという研究発表。

まず光ファイバにおける 6 モード伝送というのはあまり分かっていないが、docomo が「256 QAM 対応で LTE の下り通信速度 500Mbps」と言っている中で、光ファイバって難しいのね、という感想。

実際には、LTE のような無線環境では、それだけの電波品質を確保できるケースはあまりないだろうし、HARQ の再送なんかもバンバンかかってスループットはカタログスペック通りには出ないだろう。

一方で、光ファイバなんかだと、基幹伝送路やバックホール回線で使われるので、無線通信のような謝り率の高さや不確定さは到底許容できない。そういった背景から、「従来では 6 モード以上では QPSK」という縛りがあるのだろう。

5G では、5G で使用する周波数帯域幅自体をバックホールとすることも想定されているようだが、そういった謝り率についてもシビアに見ていかないとユーザスループットにかなり揺らぎが出てくる懸念はある。

Nomadic Node

Towards Flexible Network Deployment in 5G: Nomadic Node Enhancement to Heterogeneous Networks (PDF)

まだきちんと読んでいないけど、Huawai と BMW の共同研究。車に搭載したノードを中継基地局 (NN:Nomadic Node) と見立てた概念の有効性について主張している。NN については今あるモバイルルータのような位置付けに近い気もするけれど。

バイルルータと比較すると無線アクセス方式が変わらない(モバイルルータであれば、Wi-Fi でフレームを受信した後、5G のフレームに乗せ直す必要がある)という意味で、より処理遅延を下げられるという効果はあるのかもしれない。

また、基地局からしてみれば、高速で移動する複数の端末に対して Massive MIMO の処理を個々にかけていくよりも、まとめた NN 一台に対して追従させる方が、よりセルスループットは上がるだろう。

電波をまとめて中継するという意味ではリピータといえるが、情報をまとめて Wireless Network Coding などで圧縮処理をしているならばルータというような気もする。5G においてはこういった「今までは端末として扱っている類のノード」についても基地局的な考えを持ってネットワークへの組み込みを考えると良いのかも。

基地局開発に力を入れる Nokia

Nokia Bell Labs uses drone to deliver ‘breakthrough’ F-Cell to office rooftop | FierceWireless

Nokia の 5G 基地局のコンセプトモデル。電源不要(太陽電池で動く)、バックホール回線不要(おそらく、Wireless Network Coding なんかでユーザデータを圧縮して、Massive MIMO か何かで指向性を持たせた占有回線を使って親局と通信をするのだろう)、ドローンで設置(固定はしなくて良いのだろうか)、みたいなコンセプト。
現実には全部をフルに使うという事は無いのだろうけれど、これくらい観せておけば必要な要素技術を組み合わせた基地局が作れますよ、という Nokia の気合いが垣間見える。


Nokia makes a play for 5G with purchase of US startup | Ars Technica

上記に関連して、例えば電源不要となると太陽電池といった発電性能以外にも低消費電力も必要になる。という事でそういうベンチャーを買収したという話。Nokia は 5G で到来する基地局建設および運用の状況を予見し、積極的に要素技術の獲得に乗り出しているようだ。

C-RAN のメリット

5G New Radioに対応可能、エリクソンがアンテナ一体型Massive MIMO基地局 | ビジネスネットワーク.jp

この記事は世界初の 5G 対応基地局という事になっているが、まだ 5G の RAT (Radio Access Technology) についての標準化は終わっていない。非常に高い周波数帯について、どのようなアクセス技術が適しているか、また mMTC, eMBB, URLLC などと多種にわたるマシンタイプの制御が求められる中で、そもそもその解は一つだけなのかというところが課題となっているのかもしれない。

そういった状況下でも、少なくとも OFDMA を基調としたアクセス技術に落ち着くのではないかという潮流があり、それであればベースバンド部のソフトウェア更新で対応できるということで、「5G 対応基地局」と銘打っているようだ。

とはいえ、そもそも記事に出ているのは RF 部(いわゆるアンプ)なので、あまり 5G と関係ないような気もする。5G での導入が検討されている Massive MIMO に対応するというところと C-RAN 接続の親となる BBU についても 5G New RAT のバージョンアップが出来るというところが、5G 対応たる所以なのか。

C-RAN (Centralized RAN) については、ベースバンド部と RF 部を切り離した上で、ベースバンド部をひとつのロケーションで集中管理する手法となる。イメージとしては、今まではそれぞれの場所で独立した判断でアクセス制御をしていた基地局であったが、C-RAN からは頭脳の部分がひとつのロケーションに集まる事で、それぞれのサイトの状況を把握した上でのアクセス制御を集中して行うよう、といったところだ。こうする事で、例えば協調動作が可能となるセルが広くなるので、干渉抑制の制御がしやすくなりエリアの品質は良くなるといったメリットがある。

もうひとつの C-RAN のメリットとしては、ベースバンド部を現地に置かなくて済むというところだ。それだけ設置するコンポーネントが減るので、省スペースになる。加えて、この製品のように、RF 部とアンテナを一体型にすれば、本当にちょっとしたスペースに目立たないように設置するという事も可能になるだろう。

4G が終わる時

5G Is Coming, But 4G Isn't Going Away Any Time Soon

5G では関してミリ波(30GHz 以上)やセンチ波(3GHz 以上)を使うことを想定している。特にミリ波は通信事業者が未だかつて扱ったことの無い周波数帯域となる。減衰が激しく、屋内浸透や電波回折によるエリア確保もほとんど望めない。センチ波についてはミリ波と比較すると 3G や 4G で使用している周波数帯と近いためその周波数特性も幾分には似ているが、それでも高周波数帯特有の性質には苦労させられる事になるだろう。丁度 LTE がローンチする少し前くらいに挙がったプラチナバンド論争からも想像がつく。

過去のエントリでも触れたが、NTT docomo は 5G でも C-RAN による協調や Massive MIMO を活用する事で面展開と言っているものの、見通しが取れないところでは何をどう足掻いてもエリアは取れない。どうしても面でエリアをカバーしたいのなら、よほど基地局配置を計算していく事が重要になる。しなしながら、基地局を沢山展開するという事と、それを緻密に計算していくという事を両立してやっていく事はもはや不可能なのではないか。

そのような状況なので、5G がサービスインしたとしても当面の間は 4G との interwork が必須となる。多くの事業者は 4G でメインのカバレッジを確保し、5G はスポット的にエリアを展開する事になる。

こういった状況下で 4G に対してどのように区切りをつけるべきか。例えば日本で考えると、5G がサービスインするのが 2020 年頃として、概ね LTE がサービスを開始してから 10 年程度迎えたところになる。お客さんが残っているという状況の中ですぐにやめる事はできない(新規受付を停止するなど、数年かけた停止計画が必要)ので、そろそろ処遇について考える頃合いであろう。

サービスをやめる理由としては、(i) 技術の陳腐化、(ii) 設備更改の必要性が挙げられる。(i) については、そもそも現状の逼迫した周波数帯を用いた運用の中で周波数の利用効率を上げるような無線アクセス方式の革新は無いだろう。そうなってくると、LTE を使い続けるという選択もあり得る。とはいえ、(ii) について考えれば、ハードウェアについては陳腐化していく事は目に見えているし、そもそもベンダのサポートがいつまで続くかもわからない。

ハードウェアの陳腐化を避けるためのひとつの解として、仮想化という選択肢もある。現在、モバイルのコアネットワークについても NFV の導入が行われている。ハイパーバイザや NVF のサポートが続く限りはサービスを続ける事ができるので、今までよりもサービスの寿命は長くなるかもしれない。

IoT with Cloud

AT&T, AWS forge cloud computing, IoT, networking alliance | ZDNet

AT&TAWS との連携を強化するとの事。IoT になると、デバイスを売るといった単純なビジネスではなく(それだと単価が安くて利ざやが出ないので)、ソリューション単位で利益を上げていく事になる。

普通に通信事業者が 5G を始めたとしても、通信事業者はせいぜい回線を降ろして端末モジュールを提供するだけになってしまう。彼らが一番忌み嫌っている、正に「ダムパイプ」だ。Massive IoT のためには、IoT デバイス(から生み出される情報)を収容するサーバが必要だし、それらを活用するにはスケーラブルな基盤、すなわちクラウドが適している。

5G とクラウドの強化は、セキュリティにも強みが出るだろう。デバイスがセルラ網を経由し、そのまま AWS といったクラウドに直収されるのであれば、一切のインターネットを経由することは無くなる。デバイスが乗っ取られたとしても、そのデバイスがサーバをハックする事はできない(場合によってはクラックさせる事はできるかもしれない)ので、信頼性は高まるだろう。

HPE の NFV 連合

HPE, Samsung partner on NFV, VNF platform targeting mobile networks

Samsung が、HPE の提唱する OpenNFV のパートナに参画するとのこと。

次のステップでは NFV の導入は不可避と考えられている。通信事業者の運用観点でいっても、High Availability, Resource Allocation, Low Cost を満たすためには、仮想化が解となるだろう。

キーとなるのは、クラウド含めて仮想化基盤構築の勘所を押さえられるかどうかだろう。Samsung を含め、世界のセルラまわりのベンダは仮想化に関するノウハウがあまりないのではないか。今回の Samsung の考えとしては、(1) Network Function に集中しハードウェア選定を HPE に一任することで限られたリソースをソフトウェアに注力させる、(2) ハードウェアから仮想化されたファンクション含めて一体的なデザインを達成するためにはサーバで仮想化のノウハウを持つ HPE と組むのが早い、というところだろう。