5G repeater

SK Telecom Plans to Extend 5G Range With Repeater | Light Reading

SK Telecom が 5G 向けのリピータを開発したとの事。

リピータは 3G や 4G の頃から日本でも使われている。いくつも種類はあるが、一般的なメリットとしては回線の敷設が不要、比較的小型といったところが挙げられる。一方で、伝播する電波を受けた上でそれを増幅し再輻射するという性質上、適切なエリア設計を行わなければ干渉源も増幅させてしまうため品質が(設置前よりも)低下するというデメリットもある。

記事によると above 6GHz という事なので、高い周波数帯の持つ「直進性が強く、エリアカバレッジを確保しづらい」という問題を解決するためにはリピータは有効な手段と言える。直進性の強さが功を奏し、相互干渉となりづらいと想定されるからだ。

ところで、above 6GHz という事で Massive MIMO およびビームフォーミングのエリア配下でリピータが運用される事になるのだろうが、その場合にどのようなリソース確保が行われるかは興味深いところである。特定のビームをリピータ用に占有するような形になるのかもしれない。そうなると、Massive MIMO の一部を無線エントランスのように運用するような感じか。

OTT によるインフラの支配

A 5G Apple iPhone? Don't Hold Your Breath! | Light Reading

Apple が 28GHz 帯の実験用免許を取得した。28GHz 帯は 5G での利用が見込まれているものである。Apple 以外にも、以前から Google も同様の動きを見せているし、Facebook も別アプローチながらやはりインフラに目を向けている

これら OTT の動きをみると、Apple が端末メーカとして無線インタフェースとして 28GHz 帯に興味を持っているわけではなく、OTT がインフラに手を出していく潮流の中の 1 つであると考えられる。インフラの掌握というのは、(経営を軌道に乗せることができれば)インフラというストックモデルの中でより安定した収益を確保できるし、サービスやアプリケーションからラストワンマイルまでを垂直統合することによるシナジーを出せるといった展望がある。

例えば、AT&TDirecTV を絡めて、ビデオストリーミングをキラーコンテンツとしようとしている。いくら通信速度が速くても、それを活かすサービス、流したいトラフィックがなければユーザはインフラを必要としない。インフラというのは結局のところサービスあってのものだからだ。通信事業者と OTT それぞれがインフラを作ることを考えると、新しいインフラを作るという意味では通信事業者は有利だ。しかし、新しいインフラを使うためのモチベーションを持ってもらいやすいのは、サービスを持っている OTT の方かもしれない。

時価総額ランキングを見ると、Apple, Facebook, Alphabet, Amazon などなどが上位を占めている。IT の世界では OTT が主導権を握っていると言える。そのうち、こういった OTT による通信事業者の買収が始まる可能性もあるのかなとも思う。

FWA

5G fixed wireless gains traction in U.K. with Samsung, Arqiva trial

Samsung の製品を使ってイギリスの通信事業者が FWA トライアルをやるとの事。Verizon Spec がベースになっているのだろう。

Verizon Spec は、5G と銘打っているが FWA のために 3GPP よりも先行して仕様策定した技術になる。基本的にこれらの仕様がそのまま 3GPP に反映されるという事はなく、参加したベンダは資産流用が難しいかなと思っていたが、FWA というニーズのある国には(周波数帯を合わせるという作業はあるだろうが)そのまま売れるようだ。

イギリスなんかは(行った事ないけど)建物の築年数が長いといった背景も伴い、まだまだ ADSL が現役という事でブロードバンド化が進んでおらず、政府もそれを問題視しているようである。こういった国にとっては工事を最小限に抑えられる FWA は有効なのかもしれない。また、記事にある 28GHz 帯のような mmWave は占有帯域幅を十分に確保する事ができるため、高速大容量な通信を提供できるというのもメリットとなる。

一方で、直進性が強いため、従来のセルラーネットワークのようなエリアカバレッジを確保しづらい。カバレッジという意味で言えば、FWA 用途であれば端末は移動しないため、そういった課題もある程度割り切る事ができる。しかしながら、屋内浸透が望めないという部分は非常にネックになる。というのも、家の壁までは電波が届くものの、屋内に引き込むためには工事が必要になるからだ。この場合、「古い建物をブロードバンド化させたい」というニーズには少々ハマりづらい。

まとめると、

  • 低い周波数帯を使う場合
    • 占有帯域幅を確保しづらいため、ピークスループットは出しずらい
    • 屋内浸透が見込めるため、工事は比較的容易
  • 高い周波数帯を使う場合
    • 占有帯域幅を確保しやすいため、ピークスループットが見込める
    • 屋内浸透が見込めないため、宅内への引き込み工事が生じる

といった感じになる。過去の雰囲気からすると、前者の場合は、中途半端な速度しか出ないようなサービスとなり淘汰される可能性があるかなという印象。後者の場合、(アメリカのように)国土が広くファイバをいちいち家まで引き込んでいるとコストがかかるというケースにはよいのかもしれない。

ところで、FWA で真っ先に思い浮かぶのは WiMAX だ。IEEE802.16 系は、最初は盛り上がりを見せたものの、チップを提供する Intel が手を引き、結局は次の規格が出ず、中身は TD-LTE という WiMAX2+ が出て終わりとなってしまった。こちらは Mobile WiMAX の話で、FWA での WiMAX を提供していた地域 WiMAX なんかは本当に話を聞かなくなった。そもそも、日本の場合は NTT 東西をはじめとした FTTH サービスがアホみたいに普及しているので、高速というイメージで WiMAX は勝てなかったのだろう。

思うところとしては、FWA に対するモチベーションがアメリカとイギリスで違うのかなと。前者は国土の広さから生じる「光ファイバを建物まで敷設するまでのコスト」であり、後者は「光ファイバを建物内に引きこむための工事コスト」なのではないか。

イギリスのようなモチベーションで FWA を導入する場合は、低い周波数帯を使う方が理にかなっているように感じるが、その場合はピークレートの問題が出て、結局中途半端な印象を持たれて普及しないというリスクがある。

3GPP memo - TR38.801 V14.0.0 (2017-03)

38 series がいくつか TS (Technical Specification) になっていたので少しずつチェックしていく事に。

といいつつ、今回は TR38.801. Scope は Radio Access Architecture and Interface である。

https://portal.3gpp.org/desktopmodules/Specifications/SpecificationDetails.aspx?specificationId=3056

メイントピック

ざっと見て、議論されている部分は下記のようなところ。

  • 7 RAN Architecture and Interface
  • 8 Realization of Network Slicing
  • 10.1 Dual Connectivity between NR and LTE
  • 11.1 Function split between central and distributed unit

7 RAN Architecture and Interface / 8 Realization of Network Slicing

5G を機に、Core は Evolved Packet Core から 5G Core (NGC: Next Generation Core) へのマイグレーションが提案されている。

5G Core の特徴は下記。

  1. Slicing への対応
    • 5G では eMBB, URLLC, mMTC のユースケースが想定されているが、それらを単一のネットワークで実現するためには Slicing が必要である。
  2. CU 分離
  • Control Plane, User Plane それぞれの信号について、処理する論理ノードを分ける。
  • 具体的にメリットを述べている文献はほとんどない(TR でも明記はされていない)。

この NGC を使うか、EPC を使うかでまず選択肢が出てくる。NGC を使う場合は、新規に設備導入が必要となる。EPC の場合は、既存設備の改修で済むかもしれない。

続いて、これらの Core に gNB と eNB のどちらを接続するかというパターンが出てくる。全パターンを網羅すると、7.2 5G Architecture Options となる。

  • Option2: NGC - gNB
    • 5G として最も単純な構成
    • LTE という既存資源(オペレータ観点でいうとエリアの広さ)は全く使えない。
  • Option 3 and 3A: EPC - eNB - gNB
    • EPC と eNB が接続され、gNB はそれに付随する。
    • eNB のエリアがなければ、呼切断となる。
    • eNB から gNB に U-Plane を渡すのが Option3, EPC から直接 gNB に U-Plane を渡すのが Option3A.
    • C-Plane はいずれも EPC から eNB に渡される。
    • eNB のエリアがなければ、呼切断となる。
  • Option 4 and 4A: NGC - gNB - eNB
    • Option3 の真逆。
    • gNB のエリアがなければ、呼切断となる。
  • Option5: NGC - eNB
    • NGC が製品として出回ったころに LTE を導入するオペレータ向けと思われる。
  • Option 7 and 7A: NGC - eNB - gNB
    • Option3 の Core が EPC から NGC になったバージョン。
    • eNB のエリアがなければ、呼切断となる。

5G では 2.5GHz 以上、mmWare といった高い周波数帯を使う事から、単独でのエリア構築は心もとない。モビリティ確保の観点でいうと既存資源である LTE エリアと連続性を持たせたいというモチベーションがある。そういったオペレータにとっては、Option 3, 7 が良いだろう。

10.1 Dual Connectivity between NR and LTE

7.2 5G Architecture Options における Option 3/3A, 4/4A, 7/7A では、gNB と eNB が接続される。こうなってくると、NR と LTE 両方を使ってデータのやり取りをしたくなるというのが人情というもの。ここでは U-Plane をどの経路で流すかというところが議論されている。

eNB と gNB の連携は TS36.300 の Dual Connectivity をベースとしている。場合分けとしては 4 つが考えられる。

  • MCG で U-Plane を流す (MCG Bearer)
    • Dual Connectivity ではない
  • SCG で U-Plane を流す (SCG Bearer)
    • Option 3, 4, 7
  • MCG を経由し、MCG と SCG 両方で U-Plane を流す (Split Bearer)
    • Option 3a, 4a, 7a
  • SCG を経由し、MCG と SCG 両方で U-Plane を流す(SCG Split Bearer)
    • Option 3x, 4x, 7x

ここでいう Option 3 とか 3a とかいうのは、7.2 5G Architecture Options の Option 3 とか 3A とかとは別と考えた方がよい。後者は NGC/EPC と gNB/eNB が接続する際にどのような論理インターフェースを持つかという観点になっている。その上で、どのように U-Plane を流すかが 10.1 Dual Connectivity between NR and LTE となる。

11.1 Function split between central and distributed unit

Central Unit (CU) と Distributed Unit (DU) にノードを分けようという考えのもとで議論が行われている。CU, DU それぞれに、RRC/PDCP/RLC/MAC/PHY/RF というレイヤのどの機能を持たせるかというのがキーポイントとなる。とりあえず、全てのパターン(もっと言うと、RLC, MAC, PHY はそのレイヤ内でも)で分割させた場合のメリットデメリットを検討している。

Split の方法によっては、(CU をコアと同義と捉えると)DC の Option に近い形態となる。例えば、Option1 (1A-like split) では、RRC が CU に実装され、RLC 以下は DU に実装される。この状態で、2 つの DU に対して Dual Connectivity を実現させようとすると、CU から 2 つの DU の PDCP それぞれに対してトラフィックが流れる。これは、DC の 1A(コアから 2 つの eNB の PDCP それぞれにトラフィックが流れる)という形態と同様と捉える事ができる。

それぞれのメリット、デメリットは 11.1.2.9 Summary table にまとめられている。

  • Baseline available
    • LTE までの標準に準拠しているかどうか
    • Option 2 は 3C-like DC, Option 8 は CPRI なので、既に実装を済ませているベンダにとっては対応しやすい
  • Traffic aggregation
    • Option 1 では CU に RRC しか実装されない(C-Plane しか扱わない)ので、RAN のレベルで U-Plane を分割して複数経路で送信するという機構がない。
  • ARQ Location
    • RLC, MAC それぞれに再送制御の機構があるが、それらが CU 側にある方がロバストと言える(基地局が故障しても再送できるとか?)。
  • Resource Pooling in CU

とかとか。

(以下、後日追記)

日本国内の 5G 動向を踏まえて。

総務省の報道発表に前後して、通信事業者などで 5G に関する報道発表が多数なされた。
特に大きなものは、NTT docomo による「東京スカイツリータウン」での 5G トライアルサイトとなるだろう。

スカイツリーで5Gをいち早く体験――ドコモと東武鉄道が「5Gトライアルサイト」 - ケータイ Watch

総務省による実証実験でも、docomo のトライアルサイトでも、主としてビジネスパートナーと共にどのような協業の可能性があるかを実証実験を通じて明らかにしていくという色合いが強い。技術開発自体は装置ベンダにて盛んに行われているし、技術自体は 3GPP 標準ベースかつまだ標準化が完了していないというステータスとなっている。このタイミングで、LTE のように各社で独自に新技術導入についてアピールをしていくというよりは、まずは 5G を世間に幅広くアピールし、その可能性を広い視野で追及していくという段階になる。

そのような観点でみると、5G で何ができるか、というのが重要になる。当面は「5G = 4G よりも速く、スループットが落ちづらい」という部分がポイントとなる。なぜならば、5G の特徴として、高速大容量 (eMBB: enhanced Mobile Broad Band)、低遅延 (URLLC: Ultra Reliable and Low Latency)、他接続 (mMTC: massive Machine Type Communication) が挙げられるが、3GPP 自体は先行して eMBB の標準化完了を目指しているからだ。

NTT docomo の 5G トライアルサイトの話に戻ると、このトライアルサイトで公開されているコンテンツとしては、「リバティ車内での多ユーザ映像配信」「スカイツリーにおける4K/8K展望映像配信」と、映像配信が中心となる。また、その他の報道発表でも、映像配信関係が多い。具体的には下記の通り。

これを見て、「ユースケースとしては動画配信程度しかない」と捉えるか「動画配信を切り口に、どのようなビジネスモデル展開やマーケット展望があるか」と見るかによって、通信に関連する企業やそれを活用する企業に対する 5G への取り組み度合いが変わってくるのではないかと思う。その結果、5G が市場としてどのように発展するかが決まってくるだろう。今のフェーズは、まずは通信事業者が「どのようなサービスができるか」をパートナー企業と模索し、たたき台を作り、各業界が 5G に対して注目し議論してもらうためのきっかけを作るというところにある。

5G の行く先

What Will 5G Mean for Modern Businesses? - CommsTrader

5G の向こう 5 年程度の展望について述べられている。

5G としては、eMBB, URLLC, mMTC の 3 つのカテゴリがある。ただし、標準化の観点からも、最初は eMBB をビジネスユースケースとして想定するベンダ、オペレータが多いようだ。ただ、eMBB の次のケースとしては、URLLC が来るか mMTC が来るかは微妙なところだろう。

URLLC は 5G 特有といえるが、その分だけサービスに対する信頼性をどのように維持するか、QoS の保証をどのような形で行っていくか(また保証できないときにどうするか)といった様々な課題を乗り越えていく必要がある。自動運転や遠隔医療など、URLLC ではその制御を通信に委ねる事になる。

mMTC については、当面 IoT ユースを 5G で行うというニーズがあるか非常に微妙なところ。Cat-M や NB-IoT といった標準化が完了したばかりでこれから各オペレータがサービスを展開する事を考えると、当面は LTE をベースとしたサービス展開になるだろう。NB-IoT を超えるような端末収容ができるといったオペレータ観点での利点や、より端末管理がしやすくなるといった利用者観点での利点が一致しなければ、急速な普及は難しいだろう。

そうこうしているうちに、URLLC や mMTC は普及しないままそれ自体が陳腐化するという可能性も否定できない。NR, Cloud, Slicing など、多種多様な技術や概念の積み重なりで形成されるものが 5G だとすれば、詳細の可能性は無限大であると同時に、実態が掴めない霞のようなものに見えてしまうかもしれない。

5G News - 2017/04/09